ビットコインとは何か、基本を理解するための簡単でわかりやすい話

コインチョコレート

ビットコインという仮想通貨の仕組み

マウントゴックス社から巨額のビットコインが消失した事件で、最高経営責任者(CEO)であるマルク・カルプレス容疑者が逮捕されました。

当初は何者かによって盗み出されたという話でしたがどうも事実ではない様子で、捜査が進むにつれずさんな会社の経営状況や資産の水増しなどが明らかになり、逮捕にまで至りました。

この事件は単純に会社の金を使い込んだ巨額の横領事件と推測されますが(現時点ではあくまで容疑者ですので)、ビットコインのイメージまで傷つける結果になっています。

仮想通貨という字面(じづら)も手伝ってビットコイン自体が怪しくて詐欺まがいのものだと誤解されているかたも多いですが、実情は少し違います。

この会社がビットコインを使った商売をしていただけで、ビットコインという仮想通貨システムの信頼性とは関係ありません

風船

例えば、八百屋の親父さんが奥さんに黙ってお店の売上をキャバクラで散財したとします。

それがバレて奥さんから相当こっぴどく叱られたり、「いい歳をして元気だねえ」と町内で噂話になったりすることは当然あります。

ただし、だからと言ってお店で売っているキャベツが緑黄色野菜としてその確固たる地位を失うことはありません。

売っているキャベツに全く罪はありませんし、悪くありません。八百屋の親父さんの女癖が悪いんです。

だいぶ話が逸れましたが、ビットコインとは何なのか、できるだけわかりやすく、その仕組みなどまとめてみたいと思います。

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ビットコインの歴史を知るとわかりやすい

仮想通貨といういままでになかったもので、実態がなくいまいちわかりにくいビットコイン。

その基本を理解するには誕生の経緯を知っていると非常に理解が進みやすいので、すこしだけ復習かねて、簡単に歴史をまとめておきます。

そもそもの始まりは、サトシ・ナカモトを名乗る正体不明の人物による一本の論文が発端でした。

暗号技術などに通じた技術者たちのフォーラム(集まり)に投稿された「国などの管理を受けない独立した新しい通貨」という内容の論文。

このコンセプトに共感した技術者たちが次々と集まり、ビットコインという決済システムの開発が始まります。

大げさに言えば、既存の権力から全く独立した新しい理想の通貨システムを構築するという壮大な計画です。

技術者たちはオープンソースといった透明性が高い環境(誰でもプログラムの中身が閲覧でき、改良ができる)のもと、ビットコインの開発を進めて行きます。

その結果、非常に公正で信頼性の高い決済システムの完成に至りました。

はじめは仲間内だけの勲章

ビットコインがなぜ公正で信頼性が高いと考えられている理由は以下の点。

全ての取引(コインのやりとり)が誰にでも閲覧可能で透明性が高い点と、参加者同士がお互いを監視し理論上不正が不可能である堅牢性が上げられます。

細かい技術については本質論から離れるので割愛しますが、通貨として利用するのに必要とされる信頼性を十分に担保された決済システムと評価されています。

ただしそこに金銭的価値が発生するかは別問題で、当初ビットコインには、システム開発の貢献度に対する仲間内の勲章的な意味しかありませんでした。

日々、システムの開発と検証を繰り返し、公正で信頼性の高い理想のシステムを築き上げていく過程で、その作業に対する見返りとしてビットコインという名誉を与えられる。

名誉こそありますが、所詮はその仲間うちだけで通用する通貨。

少し語弊があるかもしれませんが、子供が遊びで作った友達同士の間だけで通用するおもちゃのお金の技術者版みたいなものでした。

背景ボケ撮影例

クラス内通貨の思い出

少し話が脱線しますが、わたしが小学生の頃、担任の先生が牛乳キャップに様々な図柄の判子を押したクラス内通貨というものを発行していました。

クラスのために労働を行うと(例えば花瓶の水の交換など)担任の先生からクラス内通貨が貰えるといった仕組み。

現在なら教育委員会が怒りまくりそうな指導ですが、既存の型にとらわれない、子供にしても楽しい教育手法でした。

最初は「みんなのために何かするといいことがあるよ」という健全なシステムだったんですが、途中からクラスで何かするにはそのクラス内通貨が必要というルールが出来上がります。

例えば教室に置いてある学級文庫の本を借りるにも、管理している図書係へ手数料の支払いが必要になるといった、まさにクラス内貨幣経済が形成されていきます。

生み出される格差、資本主義の縮図

物事は動き始めるとあっという間に加速しだすもので次々と様々な問題が。

担当の係の仕事量による経済格差問題掃除当番をクラス内通貨での代行担任の先生の判子を無断で使っての通貨偽造など、次々にトラブルが発生していきます。

そのうちに判子を押した大量の牛乳キャップを家に持ち帰る我が子に親たちも気が付き、問題が学校を超え家庭にまで表面化していきました。

結局、クラス内通貨の問題は校長まで知る学校問題にまで発展してしまい、クラス内通貨の廃止が決定され終焉を迎えます。

昨日まで通貨として価値を有していた牛乳キャップは、ある日突然、まったく価値のない元の姿へと戻りました。

新聞係という立場を利用して学級新聞を大量に発行し、大量のクラス内通貨で羽振りをきかせていた友人。

その友人がクラス内通貨の廃止が告げられたときの落ち込んだ姿を、今でもハッキリと思い出すことができます。

色々教育上の問題もあったかもしれませんが、まさに信用経済が崩れるとはこういうことなんだと学べた気がします。

デフォルトやハイパーインフレというものを、あのとき身をもって理解できたかもしれません。先生、お元気ですか?

近寄って撮影した例

ビットコインの最初の取引はピザとの交換

さて完全に話が脱線してしまいましたが、ビットコインの話に戻します。

開発に参加した技術者の仲間うちだけで通用する通貨が金銭的価値を持ち出したのは、ピザとの交換が始まりでした。

ある開発者が「1万ビットコインとピザを交換しないか」とのメッセージを仲間うちに出します。

このメッセージを面白がった他のメンバーが実際にピザを購入して届け、1万ビットコインとの交換を行いました。

これが史上初めてのビットコインでの商取引だというのは有名な話です。

この時点ではまだまだ価値が低かったビットコインですが、物事は動き始めるとあっという間に加速をはじめ、ビットコインによる取引が一気に広がっていきます。

わたしのクラス内通貨はここで様々な問題が発生し、破綻という結末を迎えましたが、そこは技術者たちがつくるビットコイン。

日々改良を重ね、非常に公正で信頼性の高いシステムへと発展させていきます。

最初は物とビットコインの交換ですが、その信頼性の高さや利便性に目を付けた投資家などの参入がはじまります。

そしてビットコインと金銭の取引が行われるようになるまでそんなに時間はかかりませんでした。

国が発行する通貨との違い

ビットコインの信頼性と金銭的価値は別問題と前述しましたが、それは発行主体(信用を担保する人)が存在しないことが大きな理由です。

そもそも国が発行する通貨とは根本的に思想が異なります。このあたりがビットコインが理解しにくくなっている点でもあります。

たとえば日本円の1万円札ですが、本来はただの紙切れです。そこにはほとんど物質的価値はありません。

物として価値がないのに、実際には1万円分の価値を持つ理由は、日本という発行主体の国の信用に基づきます。

既存の通貨は国がその通貨の価値を保証しており、国の信用を元にして取引が行われるているということです。

電気街

ビットコインが持つ信用性とは

では発行主体(信用を担保する者)がないビットコインの場合、どうやって貨幣としての価値を持たせているのか。それが先ほど触れた公正で信頼性の高いシステムです。

ビットコインではそのシステム上で総量が決められており、個人が勝手にコインを増やすことはできません

またP2Pというネットワークを利用することで、一部のユーザーがズルをして取引を書き換えるような不正もできないよう設計されています。

言い換えると、ビットコインという決済システムの高い完成度が信用の代わりを果たしている。

誰も勝手にコインを増やせないし、お互いの取引をすべてのユーザーが監視して透明性も非常に高い。そこにビットコインのツール(道具)としての価値が発生します。

ビットコインは信頼性が高く、既存の貨幣の代わりとして取引に利用できるものである。

その前提条件を受け入れた者同士が、お互いに了承した上で貨幣の代わりとして使っているツールです。

ビットコインってどんなものか質問された場合、わたしは堅牢なシステムで管理された信頼性の高いおもちゃのお金と説明します。

その新しいお金に価値を認められるかどうかは、資本主義経済では市場の判断に委ねればいいのだと考えます。

日本国内では必要性が低い

現在、ビットコインは確かに価値を持っています。ただし価格が乱高下して安定しないのは、その信用性をそのまま示しているものだと言えます。

現時点でわたしのビットコインに対する考えは、ビットコインをわざわざ利用しなくても「日本国内には信頼性の高い円という通貨がある」という立場です。

政情や経済が不安定な国の通貨に比べれば、国家破綻というリスクと比較して少しマシかなという認識です。

投機目的(ギャンブルに近いものですが)でビットコインをもつ分には構わないと思います。

仮想通貨という新しい通貨のかたち

ただし、ビットコインで実現された決済システムは、既存のものにはない非常にすぐれた技術であるとも考えています。既存の通貨を覆しかねない力をもった、革新的な理論です。

なのでマウントゴックス社長の逮捕はあくまで個人の業務上の横領のニュースで、今後も注目されるであろうビットコインという新しい技術革新を混同しないでほしいと願います。

今回の事件に関して言えば、ビットコインはキャベツなんです。

いままでの通貨の仕組みを根底から覆す力をもつ、国家の力関係をも変えかねない新技術と言われると、仮想通貨というものにSF的な中二的好奇心を刺激されませんか?

長くなってしまいましたが、ビットコインという技術に少しでも興味を持ってもらえたなら幸いです。

2018/1/31追記

コインチェック社から仮想通貨NEMの流出事件が起こり、ビットコイン、仮想通貨に関して興味を持たれ、この記事を読んでいただいている方に向けてすこし補足させてもらいます。

2018年の現時点でビットコインを含めた仮想通貨に対する個人的な考え方は、変わっていません。

取引価格の変動の大きさが、その不安定な信用性をそのまま示しているのだと思います。

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