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どこか懐かしく透明で静かな大人の昔話
よく日本の原風景という言葉が使われますが、想像する風景は人によって異なります。
茅葺屋根の田園風景であったり、海沿いの漁村にある灯台であったり、個人の幼少期の体験が大きく影響します。
ただ共通しているのは山で海であれ「美しい自然」。四季があり自然を身近に感じてきた歴史が、日本人の精神性に根強く残っています。
そういった自然の美しさ、静寂感、神秘性を、美しく静かに描いた作品「蟲師(むしし)」を紹介します。
日本のメディア芸術100選などにも選出
原作は漆原友紀さんによる漫画「蟲師」。雑誌「月刊アフタヌーン」(講談社)にて連載された作品で、多くの漫画賞を受賞した人気作品です。
動物でも植物でもない、全ての生命の起源と考えられる生き物「蟲」。
その不可思議で神秘的な存在は人にも大きな影響を与えてしまう。そういった蟲に関わった人たちの手助けする「蟲師」(主人公ギンコ)の姿を描くストーリーです。
およそ遠しとされしもの―― 下等で奇怪、
見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。
それら異形の一群を、人は古くから畏れを含み、
いつしか総じて“蟲”と呼んだ。時に蟲はヒトに妖しき現象をもたらし、
そしてヒトは初めてその幽玄なる存在を知る。
ヒトと蟲との世を繋ぐ者―― それが“蟲師”。すべての生命は、他を脅かすために在るのではない。
みな、ただそれぞれが、在るように在るだけ――。
TVアニメ「蟲師 続章」公式サイト 作品紹介
巧みに無音を用いた音響演出
この作品の特徴は、静寂で凛とした透明で神秘的な雰囲気です。
よく特筆されるのがその音響演出で、作中では効果的に無音を使って演出を行っています。台詞の合間にある沈黙の絶妙な間や、人や蟲の気配が消えたときの静寂などは特徴的です。
BGMなどは必要最小限に抑えられており基本的にどの場面も静かなので、微かな水の音や雪を踏み分ける足音など細かな音が印象深く耳に残ります。
その演出が張りつめた空気や静寂感、凛々しい神々しささえ漂う作品の雰囲気を創り上げています。
こだわり抜かれた美しい場面の数々
この作品は作画にとても手間がかけられており、そのクオリティの高さはファンの間では有名です。
ただそのこだわりの為「蟲師-続章-」ではテレビ放送のスケジュールに間に合わず、週1回の放送で約3か月の間に3回も総集編を放送したことで話題になりました。
ですが妥協しないその姿勢のおかげで、すべてが色彩豊かに丁寧に描写されており、作品の各所には息を飲むような美しいシーンを観ることができます。
大人にこそおすすめできる作品
蟲師は近年のアニメーション作品のなかで必ず傑作の一つに挙げられる作品です。
基本1話ごとに話が完結するので、どの話でも構わないので気軽に一度チェックしてみてください。
この作品特有のどこか懐かしく美しい、静寂に満ちた少し哀しさ漂う世界観を感じて欲しいと思います。
就寝前に暖かい布団の中に潜り込んで、ゆっくりと静かに昔話を聞くような感じで観賞してほしい作品です。