組織とは何か正しさとは何か「空飛ぶタイヤ」

空飛ぶタイヤ公式サイト

WOWWOW公式サイトより

WOWOW連続ドラマWの傑作

若者のテレビ離れが叫ばれて久しいですが、その傾向はますます強まり一昔のように共通の話題として「あのテレビ番組」という構図が成り立たなくなってきています。

なかでもテレビドラマは深刻です。

一部の某公共放送の大ヒット朝ドラなどを除けば、視聴率は落ちる一方。視聴率がとれないから制作費が減り、制作費が減るから作品のレベルが下がる。

結果、ドラマ好きがドラマから離れるという悪循環。

そんなドラマ不遇の時代のなか、某海女さんドラマとは別のベクトルで輝く、見応えのある社会派ドラマ「空飛ぶタイヤ」を紹介します。

WOWOWだからこそ映像化できた作品

原作は「半沢直樹」シリーズなど金融、財界などを舞台とした小説で知られる池井戸潤さんの同名小説。

2009年にWOWOWの連続ドラマW枠で放送された作品で、同年の民放連テレビドラマ番組最優秀賞などを受賞しています。

作品自体はフィクションですが、実際に起こった大手自動車メーカーのリコール隠し事件をモチーフとしており、大企業の組織の論理や社会的正義という本格派のテーマを扱った作品です。

テーマがテーマだけに、地上波ではスポンサーなどの関係で映像化が進まなかった作品でしたが、地上波に比べて比較的スポンサーの影響を受けにくい有料放送のWOWOWがドラマ化を実現しました。

主人公赤松が社長を務める運送会社で、走行中のトラックからタイヤが外れて飛び出し、通行人を死亡させてしまう事故が起きる。事故を起こした車種を販売している大手自動車メーカーが行った事故調査で出た結論は「整備不良」。

メーカーから事故の責任は赤松の運送会社にある旨の報告書が出される。しかし赤松の会社には詳細な整備記録が残っており、報告書に納得できない赤松はメーカーへ事故の再調査を求める。

会社の潔白に確信を持つ赤松だが、警察から事情聴取を受けていることもあり世間の目は冷たく、事故原因の究明が進まないなか取引停止などが続き、会社倒産の危機へと追い込まれてしまう。

実話を元に池井戸潤さんの真骨頂

ストーリーが現実の事件を下敷きにしていることもあり、細部まで非常にリアリティ溢れる作品です。

会社と銀行の関係性や、大企業の派閥人事など、元銀行員である池井戸さんの知識が加わって説得力を持って描かれます。

基本的には「正義と悪」というわかりやすい構図が取られていますが、主人公赤松だけでなく様々な立場の人間の視点から描くことで、個々の置かれた立場や想い、葛藤が伝わってくる重厚な人間ドラマです。

月の写真

淡々と語られる緊張感ある雰囲気

池井戸潤さんの作品と聞くと、大ヒットドラマ「半沢直樹」シリーズのイメージが思い浮かぶかもしれませんが、この作品は派手な台詞回しや演出などはあまりなく、淡々と話が進んでいきます。

シンプルな演出で派手さこそないですが、原作のリアリティ溢れるストーリーに更なる説得力を与え、空気が張りつめたような緊張感ある雰囲気を作り上げている作品です。

また出演者には実力派の俳優陣が並びます。

主人公の運送会社社長役の仲村トオルさんをはじめ、メーカー担当者役の田辺誠一さん、他にも大杉漣さんや萩原聖人さんなど個性的で味のある出演者たちが作品を盛り上げます。

連続ドラマとしては破格の豪華キャストですが、なかでも主人公の敵役となる冷徹なメーカー常務役を演じた國村隼さんのハマリ役っぷりと存在感は、もはや芸術レベルです。

原作ファンにもおすすめ

本格的な社会派ドラマですが、決して難解なストーリーではありません。

かといってナレーションでの説明くさい解説もなく、練り込まれた脚本で自然にストーリーが入ってくる非常に観やすい作品です。

全5話完結というのも絶妙の長さで、2時間映画ほど駆け足で話が進むことなく大切なところは十分に掘り下げてきっちりと描かれており、バランスよく構成されています。

色んな面において高い水準を誇る、原作小説の面白さにも決して負けない名作ドラマです。

池井戸潤さんの作品の雰囲気が好きな方、現在もあまロス症候群に悩まされている方は、ぜひこの作品をチェックしてみてください。

関連コンテンツユニット



スポンサーリンク
新規アドセンス20190329(20220415レスポンシブ)
新規アドセンス20190329(20220415レスポンシブ)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
新規アドセンス20190329(20220415レスポンシブ)