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どこか懐かしく、切なく、あたたかい
昨年、子供たちの間で大人気の妖怪をテーマにしたアニメ作品があります。
いまやその人気は社会現象にもなっており、鉄道会社からファーストフード店に至るまでこぞってタイアップが行われ、その経済効果は莫大なものになっています。
昔は”赤”、”ネコ”、”妖怪”とくれば水木しげる先生のゲゲゲの鬼太郎に出てくる”ネコ娘”でした。
ですが今やその座は、その人気作品のマスコットキャラクターである地縛霊の「赤いネコの妖怪」が完全に奪っています。
ちなみに私が頑なに正式名称を言わない事に関して、特に他意があるわけではありません。
単に「白いネコの妖怪」がマスコットの「夏目友人帳」を紹介するため、話の枕として「赤と白」で対比させたかっただけです。
ジ○ニャンという言葉を頑なに言いたくないとか、個人的怨みがあるわけではないので誤解なきよう。
追記
※2016年秋より、テレビアニメシリーズ第5期の放送が決定しています。
累計1000万部を超える大ヒット漫画
原作は緑川ゆきさんによる同名漫画「夏目友人帳」。白泉社「月刊LaLa」にて連載中で、単行本は、現在20巻まで刊行されており累計1000万部を超える人気作品です。
幼い頃から妖怪が見える主人公。そのせいで人との付き合いが上手くいかず、他人とは距離をおいて暮らしていた。
そんなある日、祖母の遺品から古びた一冊の帳面をみつける。それは妖怪達が祖母との誓約の証にその名を記した「友人帳」であった。
友人帳をきっかけに主人公と妖怪たちのあたたかい交流を描く作品です。
小さい頃から妖怪を見ることができた少年・夏目貴志。
彼は、祖母レイコが妖怪を子分とする証にその名を書かせた「友人帳」を継ぎ、自称用心棒の妖怪・ニャンコ先生と共に、妖怪達にその名を返す日々。
ようやく手に入れた大切な場所で、友人達との深まる絆を感じながら、夏目は妖怪達との出会いや別れを繰り返していく…。
少しずつ周りとの絆を深めてゆく主人公
この作品で描かれる景色は美しく穏やかな日本の原風景。田園などが広がり綺麗な川が流れているような、どこか見覚えのある懐かしい風景を舞台にストーリーが綴られていきます。
幼い頃に両親を亡くし天涯孤独の主人公貴志。貴志は他人に見えないものが見える為に気味悪がられ、親戚の間をたらい回しにされるなど辛い思いを繰り返す。
その結果他人と距離を置くようになり、人との関係を避けるようになってしまう。
そんな主人公が心優しい藤原家の人々との出会いや祖母の遺品「友人帳」を手にしたことをきっかけに、内向的だった主人公が少しづつ周りとの距離を縮め、変化し成長していく姿が描かれています。
ニャンコ先生をはじめ人間味あふれる妖怪たち
作品の魅力のひとつに、人間よりも人間くさい、妖怪たちの魅力溢れる姿があります。
主人公の用心棒をつとめる妖怪の斑(まだら)をはじめ、作品に登場する妖怪たちは、純粋で、不器用で、感情が豊かで。
時には主人公夏目に対し、眩しいくらい真っ直ぐに心をぶつけてきたりします。
そんな妖怪たちと愚直なほど真正面から向き合う主人公夏目。人と妖怪という垣根を越えて心が通じ合う、あたたかい触れ合いや切ない別れが丁寧に描かれていきます。
夏目は祖母レイコに繋がる妖怪たちと出会い、心通わすうちに生まれてくる疑問。人とは、妖怪とは、お互いの存在とは何なのか。人と妖怪の狭間で揺れる主人公の悩みや葛藤。
苦しみながらも何とか乗り越えていく姿に、観ているものは励まされていきます。
時の流れの前での人の儚さ
魅力溢れる人間臭い妖怪たちとの出会いや別れを中心に、仲間との友情や家族と絆などが静かに淡々と描かれ、観ていると心の深いところを揺さぶるような、どこか懐かしくあたたかい気持ちになる作品です。
人気のある作品なので観られてる方も多いと思いますが、少しでも多くの人に観てもらいたいお勧めの作品です。
今流行りの地縛霊の「赤いネコの妖怪」もいいですが、ぜひこの作品もご覧ください。何度もいいますが他意はありません。